人を信じる心が集まれば組織がまとまり、正常に機能する。
そしてその結果として、組織がいい方向に動いていくようになります。
あえて人を信じないようにするマネジメントを推奨する記事がネットで見つかることもありますが、人はロボットではありません。
心があるために、マネジメントをする人とマネジメントされる人が心を通わせないとうまくいかないのです。
今回はこのことについて話していきたいと思います。
人を信じないと相手も信じない

まず、管理職や経営者と言った人の上に立つ立場の人が、下の立場の人を信じないとどうなるかについて考えてみましょう。
人を信じない管理職や経営者は相手を信じていないので、下の人とコミュニケーションをとることを積極的に行いません。
業務に必要なことだけをやり取りします。
そして、その話す内容も下の立場の人のレベルに合っていないことも多く、指示について下の人が確認しようとしても内容をかみ砕いた内容ではなく同じ内容を復唱するような答えが返ってくる。
仕方なく自分の理解で進めたところ「なぜ俺の言う通りにやらなかった?」と詰められることになります。
基本的に相手をネガティブに見ているので、下の立場の人に対する反応もネガティブなものが多いのです。
そんな人が人の上に立っても、その下にいる人が信じてくれるわけがありません。
「もうこの人の下では働かない」、「この人は信用できない」となってしまい、下の立場にいる人たちが会社を辞めていくことにもなります。
社員の出入りが多く、採用と退職手続きのコストばかりかかる。
それだけならまだマシと言えるのですが、企業の口コミに悪いことが書かれ(そしてそれが事実であり)、求人を出してもいい人が応募してくることがなく、応募してくるのは情報リテラシーが低く、仕事が出来ない人ばかり。
結果として新しい社員があまり入らないのに、今まで働いていた社員が出ていくことで部署や会社全体の仕事が回らなくなる。
仕事が回らなくなると、さらに社員が将来や仕事内容に不満を持ち、出ていくことになる。
優秀な社員から抜けていくので、この状態になるともう、部署や会社全体といった組織が壊れていくことになります。
人を信じない人はマイクロマネジメントをしたがる
人を信じない人というのはマイクロマネジメントをしたがるものです。
マイクロマネジメントとは何かと一言で表すと、必要以上に部下の行動を監視すること。
何かに関して報告、連絡、相談のいわゆる「報連相」を求めること自体は悪くないのですが、マイクロマネジメントをする人はこの報連相を必要以上に細かく求めてくるわけです。
例えば何時から何時までどんな仕事をして、進捗はどうであるか?
これを必要以上に細かく、しかも毎日求めてくるわけです。
確かに1日の進捗をもって全体の進捗にどれだけの影響があるかを把握するのは大切です。
しかし、必要以上に事細かく報告を求められると、下の立場の人はたまったものではありません。
自分のペースで仕事が出来ずに、かなり仕事をするのが苦しい状態になります。
ある程度は権限を持たせてくれて、うまくいかない場合に報告すること、その日の結果を大まかに報告すること。
本来であれば、それくらいでちょうどいいのです。
下で働く人を信じないから細かいことが気になり、それが下の人の負担になるのです。
マイクロマネジメントをすることが自分の仕事だと思っている管理職や経営者の人は結構いて、こういうタイプの人の下で働くというのはとても大変だと思います。
基本的に人を信じない管理職や経営者がやりたがるので、実際にマイクロマネジメントを経験した自分の立場から言うと、かなり面倒で、状況報告の時間が必要以上にとられることが本当に嫌でした。
常に上司に監視されている感じがする。
仕事に対する行動の一つ一つが上司に見られている気がする。
こういう状態では落ち着いて仕事をすることが出来ず、部下にストレスばかりを与えてしまいます。
部下を疲弊させるため組織がまとまらず、仕事の結果も出ない。
これを部下のせいだと責任転嫁する管理職や経営者がいますが、これは論外であり、管理職や経営者の管理能力の不足や管理者としての適性がないことが招いたことなのです。
そもそもマイクロマネジメントをするほど上司や経営者が部下を信じていないと、部下も上司や経営者を信じることが出来ず、仕事に対するモチベーションも上がらない。
ミスに対して叱るときも、部下を信じていないので部下の立場を全く考えていない、時には人格否定や恫喝を交えながら、一方的に持論を部下に押し付けるような叱り方になります(いわゆるモラハラやパワハラにつながる行為をします)。
重箱の隅をつつくような嫌味な叱り方をする、叱るではなく怒るになっているというのも特徴的ですね。
部下の事情を全く聞かないので、叱られる方は本当にきつい。
当然、叱った後のフォローは一切なく、いい仕事をしても褒めずにそれを当たり前として労いの言葉や誉め言葉もない。
それが頻繁に起こるようでは当然仕事に関してやる気が起きるわけではなく、上司や会社のために仕事をしたいと思わなくなります。
結果として、社員は仕事に一所懸命というわけではなく、怒られない程度に仕事をする、疲れすぎない程度に仕事をするという気持ちになり、部署全体、会社全体のパフォーマンスが落ちることにもなります。
なので、マイクロマネジメントは部署や会社といった組織には不要なのです。
そして、このマイクロマネジメントをしたがる人は人の上に立つべきではありません。
人を信じることがなぜ大切なのか
ここまで人を信じない人が管理職や経営者だったりしたらどうなるかということを見てきました。
先述した通り、人を信じない人が人の上に立つと、その下の人は疲れますし、下の人も上の人を信じることがありません。
反対に人を信じる人が人の上に立つと、これとは反対のことが起きます。
「上の人が自分を信じてくれている」
こう思うだけで頑張れるわけです。
「〇〇さんのことを信用していますので」
上の人からこう言われた人は、上の人から信用されているという気持ちがありますので「何かあっても上司が守ってくれる。だから自分の考えた方法で全力でやって見せる。」と思い、仕事に全力でぶつかってくれるようになるのです。
下の人が皆この考えを持つと組織は確実に良くなります。
上の人が信じてくれるということがモチベーションの向上にもなりますし、下の人同士の関係も、同じ方向を向いている人同士の関係となり、良好になります。
このように人を信じる管理職や経営者がいることで、組織がまとまっていくことになるのです。
組織観点での人を信じることのメリット

人を信じること、人を信じる心を持つことのメリットは以下の通りとなります。
- 相手からも信用される(上司と部下の間にいい信頼関係が構築される)
- 組織がまとまり、一丸となって仕事を進めていけるようになる
- 退職や採用のコストが減ること
- 結果として人が育ち、組織が安定すること
いずれもメリットとしては十分なもので、特に上の人と下の人との信頼関係は組織においての土台のようなもの。
この信頼関係をしっかり作らないと組織はうまくまとまりません。
上の人はただ自分の仕事をこなしながら下の人の仕事の管理をすればいいと思うかもしれません。
確かにそれも大切なことではありますが、人はロボットではありません。
下の人の仕事の管理だけが仕事であれば、AIにやらせておいた方がいいのではないでしょうか?
相手を信じること、相手にポジティブなフィードバックをすること。
部下はそれぞれ一人一人の特徴が異なるため、それぞれに対して接し方を考えて信頼関係を築いていく必要があります。
これが求められるから自分は管理職や経営者の仕事は難しいと思っているのですが、実際の管理職の人や経営者はここまで考えることなく、ただ部下を管理すればいいと思っている人も多いように思えます。
上司と部下、経営者と社員の仲のいい会社はうまく組織としてまとまっていると思います。
反対に上司と部下、経営者と社員の仲の悪い会社は、部下はいつ辞めるかタイミングをうかがっている状態ですし、組織としてまとまっていません。
退職者の退職理由で結構大きな割合を占めているのが人間関係です(労働環境と待遇と並び、三大理由となっています)。
もちろん、求職時には面接でそんなことを話すと落とされるので、面接では求職者からなかなかこの事情を聞くことが出来ません。
しかし、このことはきちんと調べれば簡単にわかることです。
それすらしない経営者や管理職は、どうすればいい会社にまとめていくかを真剣に考えていないのです。
会社は仕事をするところではありますが、ただそれだけではありません。
会社というのはチームであり、組織であります。
経営者が社員を信じることが出来ないのであれば、一人で仕事をやった方が成果が出るでしょう。
そして、その方が人に悪い影響を与えずに済みます。
人や組織を動かすには人を信じる心が必要である。
このことをしっかり理解して、仕事や人の管理を行っていけば健全な組織が作れるはずです。
今回のお話は以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。