日本の債券には基本的に為替リスクは発生しません。
自国通貨建てなので、円の価値の上下により受け取ることが出来る配当金や債券の評価値に上下がないからです。
しかし、海外の債券(国債、社債のいずれも)には、円と外国通貨の間で価値の変動が起きます。
外貨で一定の配当を受け取ることになった場合、円が外国通貨よりも強くなると配当の価値が減り、円が外国通貨よりも弱くなると配当の価値が増えます。
今回はこの事についてお話ししたいと思います。
日本の債券のリスクはインフレリスクとデフォルトリスクのみ
日本の債券で注意しないといけないのはインフレリスクとデフォルトリスクです。
インフレリスクは、日本の物価上昇率が配当の年率を上回り、最終的に配当を受け取ってお金が増えたように見えても、お金の価値が下がっているために、配当を含んだお金の相対価値が、債券を買った金額よりも下回っているというものです。
例えば年利0.1%の債券を10万円分持っていたとしましょう。
10年後に償還すると考えると、10年後には10万1千円になっています(簡単にするため税金の計算は省略しています)。
しかし、日本の物価がこの時までに10%上がっていると、10年前の10万円の債券と同じ価値のお金は11万円であり、10万1千円というのはこの金額に9千円分足りず、10年後のお金の価値で考えると、9千円損してしまっていることになります。
10年間貯金で持ち続けるのよりはましですが、9千円損している時点で資産運用に成功しているとは言えません。
デフォルトリスクは債券を発行した会社が倒産して購入した債券が紙くずになることです。
日本の国債はよほどのことがない限り国のデフォルトは起こらないと思いますが、社債という企業が発行する債券はこのリスクを考える必要があります。
債券の金額全てを失うケースより一部の金額が戻ってくるというケースが多いようですが、デフォルトが起きたら完全に損をしてしまいます。
社債を個別で買う場合はこのリスクをしっかりと頭に入れ、必要であれば企業の格付けをチェックして、なるべくデフォルトのリスクを減らさなければいけません(もちろん、株と同様に分散して債券を買うという手段も考えられます)。
為替リスクとは何か?
日本の債券のリスクに加えて、海外の債券を購入する場合に考えないといけないことが1つあります。
それは為替リスクです。
為替リスクとは一体何なのかというと、日本と外国の通貨の変動によるリスクです。
例えば1ドル120円で1000ドル分の債券を持っていると、日本円での価値は12万円です。
しかし、これが1ドル100円の円高になると、1000ドル分の債券の日本円での価値は10万円です。
つまり、1ドルが120円から100円まで円高が進むと、為替の変動により1000ドル分の債券で2万円の損失が出てしまいます。
これが為替リスクです。
新興国の為替リスクは大きい
先進国の債券は外貨の価値が右肩下がりになるということがあまりなく、まだいいのですが、新興国の債券は注意が必要です。
年利が高くて一見魅力的に見えますが、一つ大きな問題があります。
それは、通貨の価値が下がるリスクが先進国以上にあるということです。
新興国の通貨は経済成長により価値が上がることがありますが、デフォルトの可能性や通貨の下落の可能性が先進国よりも大きく、ハイリスク、ハイリターンな投資商品といえます。
高い年利が設定されているというのは、それなりにリスクも高いということです。
リスクが低くてリターンの大きい商品は世の中に存在しないので、この点はきちんと認識しておきましょう。
楽天証券に一時期トルコリラの債券が年利10%くらいで売られていましたが、今では見かけなくなっています。
トルコリラはきれいに右肩下がりとなっており、1トルコリラが100円くらいの価値であった時もあったのですが、今では7円台となっており、ピーク時の10分の1以下の価値となっています。
新興国の債券は為替のチャートを見ずに買うとギャンブル性が高いので、きちんと安全な投資先であるか、チャートをよく見て、社会情勢を調べて投資するようにしましょう。
自分は新興国の通貨にリスクを感じて投資していないので、新興国通貨の債券は積極的におすすめすることはありません。
日本の国債や債券は格付けを確認し、適切にリスクを取ればインフレリスク、デフォルトリスク以外はあまり気にすることはありません。
しかし、海外の債券は日本円と外貨の為替相場により、為替の損益が発生します。
円高→円安の場合、プラスとなりますが、円安→円高の場合、マイナスとなります。
そして、先進国よりも新興国の方がリスクが大きく、年利がいいからと言って下手に手を出すと火傷する可能性があります。
外国の債券を買う場合は為替リスクを考える。
この事は、外国の債券を買う上での基本的な知識となりますので、きちんと頭に入れておいて欲しいと思います。
今回のお話は以上となります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。