今回は「5S」という言葉についてお話しします。
5Sとは文字通り5つのSのことなのですが、今回のSは英語ではなく、日本語をローマ字にした時のSになります。
5Sは生産管理や在庫管理の分野でよく使われる言葉で、それぞれの言葉は基本的なものであります。
しかし、5つのSを全て守ることが出来れば、効率化、コスト削減などに良い影響を与え、会社の経営も健全なものになります。
今回紹介する5つのSをよく覚えて、仕事の現場で実践してみてほしいと思います。
5つのS
5Sの5つのSは以下の言葉のローマ字の頭文字を取ったものです。
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- しつけ
5Sの考えではただこの5つを実践すればいいというわけではなく、この順番で実践していくことが大切になります。
それぞれのSについて説明していくことにします。
整理(1つ目のS)
まず、仕事をする上で必要になってくるのが整理です。
「あの書類はどこに行った」、「保存していたデータはどこに置いたのだろう」
こんな感じで探し物を仕事中にした経験がある人は意外と多いと思います。
何も整理されておらずにごちゃごちゃとした状態で仕事をしても、何がどこにあるかということがすぐに分からず、探すことに時間を取られてしまいます。
そのため、効率のいい仕事が出来ずにいい成果を上げることが出来ません。
特に探し物で効率を悪くするのが不要なものがあることであり、この不要なものが紛れ込んでいるから余計に探し物がやりづらくなってしまいます。
なので、無駄なものは極力捨てておいて必要なものだけを残すこと。
そうすることで、何も整理されていない状態よりは少しは作業の効率が良くなります。
これがいい仕事をする上で重要な第一ステップとなるのです。
整頓(2つ目のS)
無駄なものを捨ててきちんと整理した後は、整頓をして必要なものがすぐに見つかるようにする必要があります。
最初の整理の段階である程度探し物がやりやすくなっている状態になっていると思うのですが、さらに一歩踏み込んで探し物がすぐに見つけられるようにしておきます。
整頓では同じ種類の書類をファイリングして古い順や新しい順に並ぶようにしておき、どの棚のどの位置にファイリングしたものを置くかということを決めるなど、具体的にどれがどこにあるかということを決めて、その通りに道具や書類などを配置します。
そして使った後は元の位置に戻す。
パソコンのフォルダ構成も、どの仕事のどの内容がどこにあるかということが一目でわかるようにフォルダを作成しておき、階層構造にしてファイルを見つけやすくしておきます(あまり階層が深くならないように注意が必要です)。
そうすることで、パソコンでの作業もファイルを探すのに時間を消費せずに、効率よく作業をすることが出来ます。
整頓を行うことで整理により必要なものだけが残った状態から、どれがどこにあるかということが分かるようになることで、作業が効率化され、作業時間を短縮も短縮される。
これもしっかりとしたコスト削減方法です。
昼休みに消灯するなどと言った見掛け倒しのコスト削減の手段よりも、整理と整頓は仕事のボトルネックを取り除く手段であるため、よほど効果のあるコスト削減方法となります。
清掃(3つ目のS)
仕事をする場所がきちんと清掃されておらずに汚い状態だと、仕事をやるときにあまりいい気分にならず、仕事の効率が落ちてしまいます。
なので、仕事をする場所はきちんと清掃されている必要があります。
ごみ箱にごみが貯まったままの状態になっている。
床にはごみが落ちている。
パソコンのディスプレイやキーボードが掃除されておらず、汚い状態になっている。
こんな状態で仕事をしても、仕事の効率は上がりません。
職場全体の雰囲気の悪化にも影響してしまいます。
また、自分のデスクに埃が溜まっている。
ご飯を食べた時の汚れがそのままついたままになっている。
そんな状況になっていたらすぐに自分のデスクの清掃を行うこと。
その状態が自分の仕事の効率を下げてしまっています。
清潔(4つ目のS)
清潔であるためには整理、整頓、清掃を日ごろから行い、職場のメンテナンスを日常的に行う必要があります。
整理や整頓をしっかり行い、資料や情報を雑に扱わないこと。
そして、清掃を定期的に行い、職場を清潔に保つ。
よくこういう話を聞きます。
「職場の良さはトイレを見ればわかる」と。
トイレが汚い会社は良くないと言うことを聞きますが、これはその会社がきちんと清掃されている状態で仕事をすることの重要さを理解していないからです。
トイレというのはあまり来客の人に見せない場所ではありますが、会社の外面だけではなく、会社の内部の人からしか見えないところもきちんと清掃されて清潔に保つようにしているか、この考え方がとても重要なのです。
トイレが汚い会社はブラック企業であったり、職場全体に活気がなかったりして、求人に応募してきた人も「ここで働くのは嫌だなあ」と思ってしまいます。
外から見えないところもきちんと清掃しているという心構えは、その会社の仕事の質にも影響しています。
トイレがきれいな会社の製品はきちんとしている場合が多いのですが、トイレが汚い会社はそもそも見えないところまできちんとこだわるという意識がないため、見た目だけが良くて中身は他の会社に劣るということも珍しくはありません。
清掃の重要さを理解している会社のトイレは綺麗に保たれています。
就職、転職の面接時に会社を訪問することがあると思いますが(今ではオンライン面接を行う会社も多いですが)、機会があればトイレを借りてその時にトイレをチェックしてみましょう。
トイレの便器に汚れが目立つようであれば、その会社はアウトです。
しつけ(5つ目のS)
整理、整頓、清掃、清潔・・・これらのことは一人が実施しても会社全体の改善にはつながりません。
社員一人一人が意識をもって整理から清潔までのプロセスを実行していくことが大切になります。
そのためには社員一人一人にきちんと教育をして整理、整頓、清掃、清潔の4つを社員全員が意識して取り組むことが大切です。
その社員一人一人に教育していくことがしつけなのです。
もちろん一度の教育では社員に伝わらないことがあるので、定期的に教育を行っていく。
すると、少しずつ社員に伝わっていき、整理、整頓、清掃、清潔の習慣が出来ていく。
もちろん、教育者が整理、整頓、清掃、清潔が出来ていなければ話になりません。
社員一人一人に教育をして整理、整頓、清掃、清潔の文化を浸透させていくためには、教育者が実践していることが前提になります。
あと、経営者が整理、整頓、清掃、清潔が出来ておらず、教育者が出来ているというのもNGです。
経営者ももちろん、整理、整頓、清掃、清潔の意識をもって会社をメンテナンスしていく意識を持つ。
ただ社員にやらせるだけではなく、経営者も大掃除などに参加して自分のオフィスを綺麗にする意識を持つ。
経営者が整理、整頓、清掃、清潔を実践せずに社員ばかりにやらせるようであれば、社員からの不満が出てうまく整理、整頓、清掃、清潔の習慣が出来ないことがあります。
ですので、整理、整頓、清掃、清潔は経営者も対象となること。
それを理解して初めてしつけがうまくいくことは忘れてはいけません。
たまに社長が作業着を着て清掃を行っている会社があるらしいのですが、そういう会社は経営がうまくいっていることでしょう。
社長自身がお手本を見せることで、社員もその気になる。
また、社長が清掃しているのを知ったら簡単に汚すことなんてできません。
なので、会社は常に清潔が保たれている状態になります。
社長自らが手本を見せることも教育となりますし、しつけの一種として考えてもいいと思います。
5Sを実践するためには?
5Sを会社に取り入れて実践していくためには、まず会社の上層部からの意識改善が必要です。
上がきちんとできていないことを下にやらせても説得力がないですし、きちんと動いてくれないかもしれません。
なので、まずは上層部から5Sを取り入れ、上から下へ5Sの考え方を浸透させる必要があります。
社員への教育をする場合も強制であってはならず、社員一人一人がそれぞれ自発的に行動できるようなものでなければなりません。
強制であれば社員は疲弊しますし、社員がマイナスのイメージを持ってしまい、社員からの反発を受ける可能性があります。
また、5Sは表面的な理解だけではだめで、きちんと理解してから行う必要があります。
導入しても順番がバラバラだったり、ルールが曖昧だとうまく効果が出ません。
なので、きちんとしたルールを作って必要に応じて見直しをする。
これは最低限でもやるべきことになります。
5Sは仕事でよく使われる言葉でありますが、実践するためにはあいまいな理解のまま導入しても効果がありません。
特に5つのSの順番(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)と、それぞれ何を指すか、そして何をしたらいいのかを最低限覚えて、導入を考えるようにしましょう。
何か新しいことを導入するためにはそれに見合った効果がないと意味がありません。
形だけ取り入れて、実はきちんと実践できていなかった。
そんなことがないように5Sの導入後は定期的にチェックを行い、実際に改善がみられたかをしっかりと確認するようにしましょう。
5Sを導入するには教育のコストや整頓を行う環境整備などのコストがかかり、社員全体に考えが浸透するのも時間がかかりますが、うまくやることで業務効率化と業務品質の向上が期待できますので、かかったコストは5Sが浸透した後で回収できます。
5Sを導入する場合は根気強くやる必要があることを意識し、どれくらい実践できるかの目標を決めて導入していくとやりやすいでしょう。
また、最初から完璧を求めず、実践出来るところから実践していく。
最初から完璧を求めると社員がついてこないので、最初は目標を低くして少しずつ目標を高くして実践していくと成功しやすいでしょう。
今回のお話は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。