今回はサンクコスト(埋没費用)についてお話しします。
そして、サンクコスト効果についてお話しします。
サンクコスト効果に縛られると、さらにコストがかさみ余計に状況が悪くなるということがあります。
投資やビジネスで使われる用語なので、こんな用語があるんだということを頭に入れる程度に本記事を読むことでも構いませんし、出来れば最終章の記事も読んでサンクコスト効果に陥らない方法も知っていただきたいと思います。
サンクコストとは何か?
サンクコストとは、過去のビジネスや投資に使ったお金などのコストのことです。
埋没費用とも呼ばれ、コストの中にはお金だけではなく労力も含まれます。
サンクコストは取り戻せないコストであり、撤退を選ぶとサンクコストが回収できない分、損をしてしまいます。
そのため、サンクコストにとらわれて何とかして回収しようと行動する人が多いわけです。
サンクコスト効果とは?
サンクコスト効果とは、サンクコストをそのまま損失として撤退するのは「もったいない」という心理が働くことです。
例えをいくつか紹介しますと・・・
- ギャンブルで5万円負けている状態で「このまま終わってしまうと大負けだ」という気持ちが働いて、負けた額を取り戻そうとしてさらに追加でお金を賭けてしまう
- コストと手間をかけて作り上げたビジネスが赤字続きであっても、今までかけてきたお金と労力が無駄になるのがもったいなくて、撤退する方が損失が少なくて済むのが分かっていても、今のビジネスにお金を賭け続けて余計に損失を拡大させてしまう
- 投資において元本100万円で投資商品を購入し、元本割れが起きて損失が出て、現状の損失の状況から回復する見込みがないのに、現状から回復することを期待してそのまま投資商品を持ち続けてしまう
これらのことに共通するのは、今まで手間をかけてきたのに「もったいない」という心理が働くことで今までと同じことを続けて余計に損失を拡大させてしまう点です。
損失を回収しようとしてもそれが出来ず、状況が悪化してしまいます。
損失を回収することよりも損切りとするのが好ましい状態であるにもかかわらず、「もったいない」の気持ちで、損切りをするという判断が出来ないわけです。
サンクコスト効果の問題点
サンクコスト効果の問題点は、適切な時に適切な判断が出来なくなることです。
少額のコストや手間であれば、損切りをするのは難しくないでしょう。
しかし、コストや手間が大きければ・・・例えば5年かけて10億かけて作り上げた製品やサービスを、赤字を垂れ流しているからと言って損切りが出来るかというと、なかなか難しいと思います。
何とか赤字を穴埋めしようとして、そのままコストを賭け続けて気付けば20億の赤字。
こうなってしまうと余計に損切りしにくくなります。
そして気付けば会社が傾くようになり、最悪倒産まで追い込まれる。
もっと早く損切りして別のビジネスに注力していけば、こうはならなかった。
「もったいない」の気持ちによる判断ミスから最悪の事態を招くことになる。
それがサンクコスト効果の問題点です。
サンクコストの効果が表れやすいのはギャンブルや投資・投機になると思いますが、ビジネスの世界でも普通に起こり得ることです。
ビジネスはリスクを取りながら行うものなので、損失が出た場合に冷静になれないという心理状況になることは決して珍しくはありません。
サンクコスト効果による損失を防ぐために必要なこと
サンクコスト効果により損失を拡大することを回避するためにはどうしたらいいのか?
まず大切なのは「もったいない」という理由で続けるという習慣を捨てることです。
これが結構難しく「そんなことが出来るのであればとっくにやっているよ」という声が聞こえてきそうですが、この「もったいない」の習慣を捨てるのには一つコツがあります。
それは、過去にいくら投資したかより、将来どれくらい儲かるのかが大切であるということを理解しておくことです。
過去に投資した分は取り返すことが出来ません。
しかし、これから先の行動次第で、今後のコストを抑えることが出来たり、利益が出たりしてサンクコスト効果による呪縛から逃れることが出来るのです。
つまり、過去や現在、目先の利益に目を向けすぎずに、将来どうなるかに目を向けることを意識することです。
そして、その将来は決して楽観的ではなく、きちんと根拠に基づいたものであることが必要で、しっかりとどういう計画でどのような将来を迎えるということが計画できれば、今の段階でどうするべきかの判断がしやすくなります。
サンクコストの分を回収しようとしても、特に回収の見込みが立たなければそこで損切を行う。
そうすればそれ以上損失を出すことはなくなります。
「そうは言ってもサンクコストの分を損切りすることはそんなに簡単には出来ないよ」
という声が聞こえてきそうです。
そこで、次にやるべきことは、ボーダーラインを決めておくことです。
このボーダーラインを下回ったら撤退する。
この線を決めておき、本当にボーダーラインを下回ったら感情論抜きで、そのビジネスを打ち切る。
投資でも、ボーダーラインを下回ったら、それ以上深追いせず、スパッと損切りして売却する。
これって簡単そうで意外と難しいです。
なぜなら、どうしてもボーダーラインを下回っても「まだいけるのではないか」という心の声が邪魔をします。
しかし、その心の声は無視する必要があります。
「まだいけるのではないか」と考えて深追いするのはギャンブルと何も変わりません。
そしてたいていの場合、この心の声に従って行動した結果、損失を拡大して多くのお金を失うのです。
深追いすればするほど、サンクコストの分を損切りすることが難しくなる。
この判断が難しくなることが、ビジネスや投資を行う上で損切りをすることを難しくさせています。
投資のように自分一人が損失を受けるのであればまだいいです。
しかし、会社のビジネスのように意思決定をする人が、サンクコスト効果でなかなか損切りをしないとなると、そこで働いている社員全体を巻き込んでしまうことになります。
ボーナスが出なくなる、給料が下がる、給料の遅配や未配が起きる。
こんな状況でモチベーション高く働ける社員は少ないでしょう。
中にはサンクコストの分を回収できないのは経営者のせいなのに、それを社員のせいにしてしまう会社もあるでしょう。
こういう会社は論外であり、淘汰されても何にも問題がない会社であると言えます。
会社の業績が落ちたことや待遇が悪くなったことでモチベーションが下がった社員に対して鞭を打っても、経営者の判断ミスであることが分かっているので余計にやる気がなくなってしまいます。
そして、社員が次々と辞めていき、サンクコストの分を回収するどころか、人手不足により余計に損失を拡大させて倒産する。
サンクコストの分を回収できない理由を社員のせいにしようとしても最終的には経営者の身にすべて責任が降りかかってくるのです。
だから、どれくらい損失が出たら撤退するというボーダーラインの設定はとても大切であり、損失を最小に抑えるためには絶対に撤退のボーダーラインを決めて感情に依存しない判断をしなければなりません。
コストと利益にバランスを考え、明らかにコストに傾いていると、将来うまくいくとは思えません。
なので、コストと利益のバランスを見直して、今後どうするか、冷静な判断をすることが大切になります。
過去にこれだけ投資をしたからということばかりに目を向けていると、もっといい将来が期待できる選択肢を見逃してしまうこともあります。
サンクコスト効果に縛られないためには感情的にならずに冷静になること。
そして、損切りのためのボーダーラインを決めてそれを下回ったらきちんと撤退の道を選ぶこと。
状況が悪くなると何とかもっといい状況にしようとして焦って行動しがちですが、グッとその気持ちを抑えて、冷静で機械的な視点で判断すること。
これがサンクコスト効果に縛られ、最悪の結果を出さないために必要な考え方となります。
今回のお話は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。