お金の勉強をする上で出てくる言葉である、ポンジスキーム。
ポンジスキームは誕生してかなり時間が経った今でも残る詐欺の手口の一つであり、この手口についてあらかじめ知っておくと、ポンジスキームの詐欺に引っかからなくて済みます。
ポンジスキームのポンジは人の名前(チャールズ・ポンジ)で、ポンジは実際にポンジスキームを実行して出資者を欺きました。
この記事ではポンジスキームがどんな詐欺なのかを最初にお話しし、日本における事例をいくつか挙げ、どのように対応したらいいのかを最後にお話しします。
目次
ポンジスキームとは何か?
ポンジスキームは詐欺の手段の一つとして知られているものであり、詐欺の中でもとくに有名なものです。
普通の詐欺は出資者からお金を受け取るとそのままバックレて終わりなのですが、ポンジスキームでは詐欺を行う人が実際に配当を出すことで出資者に安心感を与えます。
そして安心して投資が出来ると投資家に思わせることで、さらに詐欺を行う人に投資をしようと言う気持ちにさせます。
しかし、ポンジスキームでは出資者から集めたお金を実際に資産運用することがありません。
出資者に支払う配当はそれぞれの出資者から集めたお金の一部を配当として支払っているだけなのです。
そもそも利益を配当に回す仕組みになっていないため、この方法で出資金を集めて配当を出す方法では、出資者や出資金が増えなくなると成り立たなくなります。
そして配当金が支払えなくなるか、十分な出資金が集まったタイミングで突然配当が途切れ、詐欺を行う人への連絡も突然できなくなってしまいます。
人の欲を突いた巧みな心理作戦により起きる詐欺であり、出資者は出資したお金を回収できずに泣き寝入りすることになります。
これがポンジスキームの手口となります。
チャールズ・ポンジがやったこと
チャールズ・ポンジが実際に行ったこともポンジスキームとは何かを説明した時の手口とほぼ同じような感じになります。
チャールズ・ポンジは「90日で40%の利回りが得られる」という触れ込みで出資者を集め、数千の出資者から数百万ドルを集めました。
ポンジは出資者に実際に配当を出し、「本当に言われた通りの利回りが得られるんだ」と出資者に思わせました。
しかし、ポンジが集めた出資金は実際に資産運用を行って発生した利益から出るものではなく、集めた出資金の一部から配当を出すというものでした。
しかし、出資した側は実際に配当が出たことで安心して、さらに出資を行おうとします。
また、この話を聞いてから新たに出資を行う人も出てきます。
しかし、配当が実際に資産運用で発生した利益から出ていないため、実際は出資金が増えるか、新たな出資者が現れるかのいずれかでない限り、出資金がどんどん減っていくことになります。
つまり、ポンジが行った詐欺の手口とは自転車操業的な運用であり、破綻を前提とした詐欺だったのです。
当然、最終的には出資者の増加の伸び悩みと出資金の増加が見込めなくなったことで、この仕組みは破綻し、ポンジは出資者の前から姿を消してしまいました。
出資者は出資金すら回収できずに大損をしてしまうという結果になってしまいました。
この手法はポンジが詐欺を働いた1919年から100年以上たった今でも注意するべき詐欺の手法として知られるようになっています。
ポンジが詐欺を働いたころは海外で購入する国際返信切手券の切手の交換レートと実際の外貨交換レートに差があり、利ざやが得られるという背景がありました。
この事をうまく説明していれば確かに騙される人もいると納得が出来ます。
現代のポンジスキームについて
現在詐欺として行われているポンジスキームもポンジが行った詐欺とほぼ同じです。
高い利回りで出資者を集め、ある程度人が集まったところで連絡が付かなくなって行方が分からなくなります。
実際に配当が出ているので安心してしまう人も多く、さらに追加で出資してしまう人もいます。
そして油断している隙をついて突然連絡が付かなくなってしまいます。
日本で起きたポンジスキームによる詐欺を三つ紹介します。
安愚楽牧場事件
安愚楽牧場事件は和牛オーナー制度の中でとくに有名なものであり、最初はただのオーナー商法だったのですが途中からポンジスキームに陥った例です。
出資者は母牛のオーナーになるために出資金を出し、子牛が産まれると子牛の売却益から配当を受け取るという仕組みとなっており、さらに期間が満了すると、出資した分が出資者に全額戻ってくるという仕組みになっていました。
安愚楽牧場事件では出資金を運用する側が実際に牧場を経営し、順調に牧場数を拡大していくことで、配当を出し続けていました。
安愚楽牧場は、初めの方はきちんと産まれた子牛を売った利益から配当が出ていました。
しかし、途中で赤字に転落し、口蹄疫の被害や牛肉の福島原発事故での風評被害が起きたことが追い打ちとなり、2011年8月に経営破綻することとなりました(そもそも安愚楽牧場の肉がまずいということとコスト削減が出来ていなかったことも問題だったようですが)。
また、資金の集め方や使い方にも問題があり、繁殖可能ではない子牛を繁殖牛として販売してきたこと、繁殖牛の頭数を虚偽申告していたこと、実際には存在しない架空の繁殖牛を販売していたことが判明し、新しい事業を展開しようとするもことごとく失敗していたこと。
配当も実際に子牛を売却した利益からではなく出資者から集めた出資金から配当が支払われるようになるという自転車操業に陥ることになりました。
まさにポンジスキームの状態となり、2011年8月に経営破綻。
出資者にお金が戻らない状態となり、出資者のお金の4000億以上が消えてなくなる事件となりました。
円天事件
円天は現金を円天内でしか利用できない仮想の通貨に交換し、それで商品を購入できるというシステムを導入した商売でした。
運営会社が健康食品や寝具を販売する会社だったので、円天自体の利用範囲は決して広いものではなく、狭いものであったようです。
これだけを聞くとそんなもの誰も使用しなかったのではないかと思うかもしれませんが、円天を運営する会社は元本保証で高いリターン率を謳ったうえで出資者を募り、出資金を集めていました。
最初は配当を現金で支払っていたのですが、途中で資金繰りが苦しくなり自転車操業状態となり、やがて円天で配当を支払うことに。
この時点でポンジスキームが成立しているのですが、最終的に円天での配当も停止し、出資者に出資金が戻る保証金の返還も停止してしまいました。
有名人を広告塔に置いて大々的に宣伝していましたが、最終的に経営者が組織的詐欺の疑いで逮捕され、最終的に出資者に保証金が返還されず、多くの出資者が泣き寝入りをする形となってしまいました。
また、広告塔になった有名人の評判を落としたことにもなったと言ってもいいかもしれません。
オレンジ共済組合事件
政治団体が運営するオレンジ共済組合は、オレンジスーパー定期という年利6~7%を謳った商品を出し、およそ93億円もの資金を集めました。
しかし、この資金が運用されることはなく、選挙費用や政界工作費、私的な借金の返済や遊興費、資金の私的流用に使われていました。
配当自体は集めた資金の中から支払われるという自転車操業の状態となり、ポンジスキームの典型例のような形となりました。
オレンジ共済組合は事件が発覚した1996年に倒産。
政治団体が応援していた議員は翌年に逮捕され、懲役10年の刑を言い渡され、参議院議員の座を失いました。
出資金は出資者にほとんど戻ることがなく、出資者が大損をしてしまう事件となってしまったのです。
ポンジスキームに引っかからないために注意するべきこと
ポンジスキームに引っかからないために注意するべきことは以下の3つです。
- 見知らぬ人の儲け話は疑うこと
- 高い利回りはほとんどの場合は罠であること
- 運用方法が現実的なものなのかよく調べること
まず、全然知らない人からの儲け話は疑うことが大切です。
普通であれば第三者に美味しい話をする人はいません。
テレビでCMを流しているから安心だと思うかもしれませんが、安愚楽牧場も円天もテレビでCMを流していました。
なので、テレビのCMで流れているから安心だという幻想は捨てたほうがいいでしょう。
本当に儲かる話であれば、自分や自分の身内だけに教えてあとは秘密にしておきたいものです。
キノコ狩りや川釣りも、良く採れる場所、良く釣れる場所を他人にタダで教える人はいません。
お金の話になると尚更、自分が開拓した儲かるものを他人に教えたがる人はいないでしょう。
なので、全く知らない人から儲け話の連絡が来たらほぼ詐欺だと思っていいです。
次に高い利回りについてですが、毎月の利回りが10%などと言うのは明らかに異常な話です。
年利に換算すると100%を超えており、投資を知っている人であれば現実的に不可能な数値であることが分かると思います。
投資の神様であるウォーレン・バフェット氏ですらこの数値を出すことは不可能です。
投資の利回りは3~5%の年利が普通で、年利10%の成績でさえ達成するのはかなり困難です。
投資は年利5%も行けば上出来、それ以上のリターンをアピールしているものはほぼ詐欺だと思って問題ありません。
最近よく見る年利7%のリターンを謳っている「みんなで大家さん」ですら安全かどうかは怪しいものです。
世の中に楽して儲かる話はありません。
普通に投資をしていれば、何も考えずに100万円を預けて翌年に200万円になることはまずあり得ません。
100万円預けて毎月5万円の配当が入ってくることもあり得ません。
楽して儲かりそうな話に食いつく人がいるからポンジスキームは成り立つのです。
円天や和牛投資の時もそうだったのですが、投資の内容が現実的ではないものは詐欺と思った方がいいです。
美味しすぎる話には罠があります。
その罠に引っかかると利益が得られるどころか、大損という痛みを負ってしまいます。
まずは出資金の運用が現実的であるかをしっかりとチェックをすることが必要です。
個人的に言えるのは配当を伴うオーナー制度の会員を募集する話には乗らない方がいいということです。
過去に存在していた和牛オーナー商法もすべて破綻しましたし、そもそもオーナー商法が法律で規制され、消費者庁の許可なくオーナー商法を行うこと自体が違法になっています。
今後は危険なオーナー商法が出てくる可能性は低くなると思いますが、0になるとは思いません。
消費者庁のお墨付きをもらったから安全とは決して考えず、何か抜け穴を通ってやっている商売ではないか?
疑ってかかる姿勢が必要だと思います。
ポンジスキームは、マネーリテラシーの低い人、労せず儲けたい人を巧みに騙す、厄介な詐欺手法です。
100年以上前から存在し、今でも詐欺の手口として形を変えながら存在している状態です。
昔は勝手に個人情報を調べて電話してくる詐欺業者が結構いましたが、今はそこまで酷くはなくなっています。
それでも、詐欺は全くなくなったというわけではありません。
ポンジスキームのような詐欺に引っかからないためには美味しい投資の話は自分にはやって来ないことをまずはしっかりと理解すること。
美味しい話は自分や身内だけの秘密にすることが普通であること。
投資の相場をきちんと調べ、相場から外れた投資になるような話には乗らないこと。
この3点はきちんと抑えておくとポンジスキームで大損してしまうことはなくなります。
現実離れをした投資の話は100%が実現できないものです。
素人があのウォーレン・バフェット氏を上回る投資成績を出すことなんて不可能なのです。
ポンジスキームは、きちんとマネーリテラシーを向上させておけば防げる詐欺なので、今回お話しした内容をきちんと理解して、実際にポンジスキームと思われる儲け話が来ても冷静に無視するか断ることが出来るようにしましょう。
今回のお話は以上となります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。